ふくいの木の魅力
福井県にはたくさんの樹木がありますが、いちばん量の多いものが「スギ」です。これは、戦後荒廃した森林の再生や旺盛な木材需要に対応することを目的として、昭和40年以降、拡大造林(主にスギの植栽)が積極的に行われたからです。このように言うと、意外に新しいもののように思えますが、実は………。
ふくいの木の魅力に迫ります。
~豆知識~
「ふくいのスギ」と一言で言っても、その品種はなんと24種もあります。
- 奥越地区には、石徹白スギ、半原スギ、赤谷スギ、平泉寺スギ
- 越前地区には、水海スギ、金見谷スギ、市布スギ、五太子スギ、味真野系スギなど
- 若狭地区には、黒河スギ、新庄スギ、芦生スギなど
福井県では、それぞれの地域の特性に応じて、最も適した品種を造林してきました。スギはもともとの郷土樹種であり、その形態や材質が本県の生活や風習によくあうからだと考えられます。
1. ふくいの木はスギ?~福井県には縄文時代からスギがあった~
樹齢500年の西光寺の大杉(勝山市)
~縄文時代には、こんな杉が一面に広がっていた?~
わたしたちになじみの深いスギも、天然のものは秋田県の山奥、屋久島のように人里離れた地にしか生えていません。天然のスギは、昔から、山奥にしかなかったのでしょうか。実は、2,000年前の弥生時代ころまでは、東海地方や北陸地方では平野部に普通にあったことが福井県若狭町黒田の埋没林などから明らかになっています。
黒田の埋没林は、水田の下に巨大なスギの切り株が一面にあったもので、石斧や鉄斧で切断した跡があり、ここに縄文時代から奈良時代のころまでスギ林があったことが分かっています。弥生時代以降、鉄器が普及してスギ材が建築材や生活用材として利用され、平地の開発も進んだため、天然林が激減しました。
その後、スギは全国いたるところで植林されるようになりましたが、スギの見えるこの風景は、他の地域とは違い、福井県の場合、2,000年前にもどったようなものとも言えます。
※福井県史によると、花粉分析の結果、今から5万~3万3千年前の時期にも「スギの時代」があったと記載されています。湿潤・多雨・多雪気候が支配的な状況下にあったようです。
-
黒田埋没林の巨大なスギの根株
三方上中郡若狭町縄文博物館展示 -
樹齢150年の金見谷スギ林(池田町)
~手入れの行き届いた森林~
2. ふくいの木は、福井の気候風土に合っている?
-
スギ林(池田町)
-
松林(敦賀市)
植物はもともと自分の身を守るために防虫や防腐効果のある成分を持っていると言われています。その力は、植物が進化する過程の中で育まれたもので、その土地に育った植物ならではの特性を持っています。「植物」は、「育った土地で活用」してこそ、その真価を発揮するものなのかもしれません。長年の風雪に耐えながら育ったふくいの木にはどのようなものがあるのでしょう。ふくいの山には様々な木が育っていますが、住宅などに利用されているものには、以下のようなものがあります。針葉樹では、「スギ」「ヒノキ」「マツ」。広葉樹では「ケヤキ」などが代表的なものでしょうか。なお、県内蓄積(量)の約6割が「スギ」となっています。
住宅に利用される主な樹種
-
スギ・・・木目と色が「売り」
○構造材から内装材まであらゆる場面で使用可能。最近、梁桁材での利用に注目が集まる
○福井県に一番多くある木 -
マツ・・・強度が「売り」
○クロマツ・アカマツを指す
○福井県の県木であり、主に横架材として利用される
※マツクイ虫被害により入手困難な状況 -
ヒノキ・・・光沢と独特の香りが「売り」
○抗菌、防虫・防腐効果が高い
○日本を代表する建築材料
○福井県では、嶺南地域に多く植林されている。 -
ケヤキ・・・堅さと木目が「売り」
○家具・建具等の指物や神社仏閣の建築材料に利用される
○伐採から使用するまで年数が必要
3. ふくいのスギは使える?使えない?
ふくいのスギの曲げ強度は、全国のスギの平均値を上回っていることが県総合グリーンセンターの試験により明らかになっています。
福井県総合グリーンセンターでは平角材(県産スギ)の曲げ試験を実施し、国土交通省(旧 建設省)から告示された「針葉樹の構造用製材日本農林規格」に対応した「曲げ」の基準強度をクリアしていることを確認しました。 また、供試材(120本)の9割以上がヤング率E70以上であり、曲げ強度性能を比較した場合も全国平均を大きく上回っています。
1)試験の概要
試験調査年度 | 平成11年度~平成12年度 |
---|---|
寸法 | 12cm×24cm×400cm |
乾燥条件 | 屋内で約2ヶ月間天然乾燥した後に人工乾燥(中温蒸気式乾燥) |
試験場所 | 福井県総合グリーンセンター木材加工館 |
曲げ試験方法 | 3等分点4点荷重法(実大材強度試験機) |
※スパンの長さは、梁せい(24cm)の18倍(432cm)+張り出し部分(10cm×2)が標準となっているが、今回の試験体の長さは4mであるため、測定値を調整しています。
2)試験結果
試験の結果、県内産スギ平角材の曲げ強度性能は、平均43.5N/mm2であり、この値は農林水産省森林総合研究所が発行している「製材品の強度性能に関するデーターベースデータ集(6)」の他県産スギ平角材の平均曲げ強度38.9N/mm2を大きく上回っています。
-
スギ平角乾燥材
曲げヤング係数と曲げ強度の相関 -
県産スギ平角材
ヤング係数等級毎の曲げ強度(n=120)
基準強度について構造用材料として用いられる木材の強度について
試験結果から曲げ強度(基準強度)を求めると27.8N/mm2となり、建設省告示1452号(H12.5)無等級材の22.2N/mm2の値を上回っています。
樹種 | 曲げ強度(N/mm2) | 備考 |
---|---|---|
スギ | 22.2 | 曲げ強度:建築基準法(無等級材) |
米マツ | 28.2 | |
県産スギ(n=120) | 27.8 | 総合GC実大材試験機による試験結果(nは供試体数) |
県産スギ(n=30) | 25.6 |
基準強度の求め方(信頼度75%の5%下限値)
f = f0.5—Ks
f:材料強度(基準強度)
f0.5:曲げ強度平均 = 43.5N/mm2
K:片側許容限界を求めるための係数(n = 120)= 1.747
s:標準偏差 = 9.01
f = 43.5-1.747×9.01 = 27.8 N/mm2
木造建築物の安全性を確保するため、構造材料の強さ(基準強度)としては、強度試験結果から得られた平均値ではなく、下限値を基にして算出される値が使用されています。(木質材料は、強度にばらつきを持っているため)
4. 福井の人は、木造住宅が好き?
平成14年度県政アンケートによると、家を建てるなら「木造住宅にしたい」「できれば木造住宅にしたい」と思っている人が約9割にもなります。
家を建てるとしたら?
木造住宅の良さの理由の1位は「やわらかさ・ぬくもりがある」2位は「湿度を調整する」3位は「伝統的文化が感じられる」となっています。
木造住宅の良さは?
福井県では、多くの人が小さいときから木造住宅に住んでおり、木の優れた特性を感覚的に理解していると思われます。
木造住宅は、福井県の人にとって、最もなじみのある、そして住みやすい住宅であると言えるでしょう。