住まいと木材
“健康で長生きしたい”と誰もが思う事でしょう。木のある環境(住まい)には、そんな思いに応えてくれる“何か”がありそうです。「あたたかみがある」「落ち着く」「心がなごむ」などの感覚的な面での評価が多い木材ですが、科学的にいろいろな効果が明らかになってきています。
1. なぜ快適なの?
人間の快適さに影響する気候要素は、温度・風・湿度です。木は、湿度が高くなると湿気を吸収し、湿度が低くなると放湿してそれを高め、周辺空気の湿度が一定になるよう自動的に調節します。この調湿性能は、人の健康にとてもよい効果を発揮します。
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豆知識
正倉院の宝物は、「からびつ」という厚さ2㎝のスギ材の箱に収納されています。木材の調湿作用により、宝物が非常に良好な状態で長年保存されてきたことがよく知られています。
スギ材でからびつと同様の箱をつくり、箱内外の湿度を観察したところ、箱外の湿度が50~80%まで変化しても、箱内は65%前後に保たれているという試験結果があります。からびつ内の湿度もほとんど変動せず一定に保たれていたのでしょう。
調湿性能の秘密
木材がビニール、ガラス、コンクリートなどよりはるかに多くの水を保有できるのは、木材の構成成分の70%が親水性で、1グラム当たり最大約0.3グラムの水を保有できるからです。
2. なぜ温かいの?
木材が好まれる理由のひとつに、「木材は触ると温かい」という手触りの良さがあげられます。なぜ、温かいのでしょうか。これは、木材が熱を伝えにくい性質をもっているせいです。木材(スギ)は、コンクリートの12分の1、鉄の483分の1しか熱を伝えません。コンクリートや鉄は熱を伝えやすいため、手で触ると冷たく感じ、木材は熱を伝えにくいため、温かく感じられるのです。
身近な事例
この性質を利用したものが、鍋などの調理道具の取っ手や柄です。鉄やステンレス、アルミニウムなどは、熱が伝わりやすくすぐに熱くなってしまうため、木製の柄が使われます。また、熱さと正反対の冷たさでもこの性質は役立っています。外に面したガラス戸やドアの取っ手などを木にするのも同じ理由からです。つまり、取っ手やドアに触れた手から体の熱が奪われないようにしているのです。
熱を伝えにくい秘密
木材はパイプ状の細胞の集合体です。このパイプ状の細胞の中には、身近な物質では最も熱を伝えにくい空気が入っているため、木材は熱を伝えにくいのです。
3. なぜ目にやさしいの?
自然がつくった造形美
木材の美しさは、材面に現れる模様と自然な色合いにあります。材面に現れる模様は木目と総称され、組織の特徴、樹木の成長環境や幹の部位により様々に変化しますが、特に装飾価値があるとき、その木目を「もく(杢)」といいます。樹木は、その年々の気候により、成長量が大きいときと小さいときがあり、そのため年輪幅は一定ではありません。この自然がつくりだす年輪幅の規則的だが揺らぎのあるパターンが、人の目に自然な、深みのある、感じの良いイメージを与えるのです。
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規則的な縞模様
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スギ柾目
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スギ板目
木目の揺らぎは、比較してみれば一目瞭然です。規則的な縞模様を見ていると目が疲れませんか?
光沢と目にやさしい反射
木材には、細胞構造に基づく微少な凹凸があり、それにより光が散乱されることで、「つるつる」も「ざらざら」もしていない光沢感があります。これは、ガラスやコンクリートでは作り出せないものであり、まぶしさの軽減にもつながっています。
また、木材は紫外線の反射が少なく、目に与える刺激が小さいことが特徴です。さらに、木材からの赤外線反射は多く、これが木材に「あたたかさ」を感じさせる要素にもなっています。
4. なぜリラックスできるの?
森を散歩すると気分がいいのは、木から出るフィトンチッドという香り成分のためだと言われていますが、そのフィトンチッドを使った実験の結果、血圧が下がったり、脈拍の乱れが少なくなるなど、木の成分には私たちをリラックスさせる効果があることが判っています。
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ストレスの多い現代人には、リラックスできる木のある空間が良い!!
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スギ・ヒノキなどのにおいは、圧倒的に好まれています。
緑の森のイメージがよみがえるからかもしれません。
5. なぜ安全なの?
人は歩いたとき、あるいは飛び跳ねたときに、足や膝、腰などに衝撃を受けます。また、壁などに衝突したり、床に転倒したときには、激しい衝撃を受けます。このため、床や階段、壁などに衝撃を吸収してくれる材料を使用すると万が一の時に大事に至らないですみます。このことから、衝撃緩和機能をもつ木材が安全性の高い材料として注目されています。
木材は、衝撃を吸収しやすい性質をもっています。
木材とコンクリート・プラスチックの床とでは、衝撃の吸収力は2~3倍もの違いがみられます
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